
移動と感動——鉄道の文化と記憶
1887年、台湾で最初の鉄道建設が始まりました。私たちのよく知るこの土地を走る鉄道は、それぞれの地域に根差した物語を語り継いできました。この百年あまり、鉄道の発展は、台湾の政権交代や経済の転換、都市と地方の格差といった変化を見届け、多様で広範な影響をもたらしてきました。
列車での移動は劇的な変化をもたらし、多くの人びとの喜びと悲しみ、別れと出会いに影響を与えました。その情景に心を揺さぶられた各世代の創作者たちが、まるでリレーのバトンをつなぐように、文学や音楽、歌、絵画、写真、映画などを通して、暮らしにおける移動の座標軸として鉄道を丹念に描き出し、鉄道とともにある営みを映し出してきました。
本展では、こうした作品を収集・整理することで、現代社会の文化と鉄道が出会い、織りなしてきた感情や記憶を浮き彫りにします。
映像作品における鉄道文化は、初期のモノクロ映画から現代のカラードキュメンタリーに至るまで、時代やジャンルを越えて描かれてきました。列車は単なる移動手段にとどまらず、別れや夢の追求、そして時代の移り変わりを象徴する存在でもあります。映像展示エリアでは、洪元約医師が新婦を迎えに行く様子を記録した1938年の作品をはじめ、当時の街並みや蒸気機関車の姿を捉えた名作の数々を紹介し、鉄道が持つ深く多様な文化的意義を映し出します。
文学展示エリアでは、作家たちが文字を刻んで描き出した鉄道への深い想いを紹介しています。作家たちによる旧作を書き写した手稿や、鉄道文学の朗読映像に加え、台鉄が創刊した『暢流』や『路工』などの機関誌に掲載された、作家や鉄道職員たちの投稿作品も展示しています。
音楽展示エリアでは、鉄道をテーマにしたレコード、CD、カセットテープなどの展示に加え、数多くの鉄道音楽を試聴できるコーナーもあります。政府のプロパガンダとして制作された「台湾鉄道行進曲」、列車で働く人びとや乗客、沿線の風景を記録した「快車小姐(特急ガール)」、故郷を離れて異郷で奮闘する心情を歌った「向前走(前を向いて歩こう)」、「熱涙暗班車(涙の夜行列車)」、人生の悲喜こもごもを描いた「車站(駅)」など、広く親しまれている名曲の数々をお楽しみいただけます。
絵画・写真展示エリアでは、多種多様なスタイルや流派の作品を展示。アーティストたちの抒情的な表現を通して、台湾の異なる世代が経験してきた鉄道の環境や人文的情景を垣間見ることができます。また、台鉄に30年以上勤務していた画家・陳世雄氏が描いた駅弁や太陽餅のパッケージも展示しています。